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ほんばこ 第七回 「原発大崩壊! 」



武田邦彦 著
ベスト新書 刊
 
 著者である武田邦彦は,元内閣府原子力委員会および安全委員会専門委員を歴任した工学博士であり,環境・原発問題に関して独自の見解で著作・講演で活躍している論客である。
 この本は,福島原発事故から2か月後に発行されおり,福島原発事故後の政府・行政・電力会社関係者およびマスコミ等の事故対応に憤りを感じて,これまで著者がとってきた独自の原発への見解とこれからの「エネルギー改革案」を披歴している。

 著者は,原発に対して単なる推進派でも反対派でもなく,簡便に言えば「厳しい条件付きで推進」としている。しかし,現在の日本の原発はすべて危険だが,日本には「安全な原発」をつくる技術はあると立場でもある。
 原発反対派は,科学的・合理的に理解した上での反対ではなく,イデオロギーとして反対しているので話し合いとか改革・改善点を求める気質を持っていなく,ほぼ信仰として反対している。
 また,原発推進派の方も似たり寄ったりで,専門性が高いことを利用して,自分たちだけの「原子力村」を造り,レッテル貼りを得意とする日本社会では原子力に多少なりとも従事している人は,なにがなんでも原発賛成でなければならないという村意識が強いため,他からの忠告や提案を受け入れる度量がないとしている。
 この状態は,現在も感じられることですが,双方がこのような状態では,日本の重大問題であるエネルギーとしての原発問題は少しも改善されず,むしろ国民の間に深い対立と大きな財政負担を強いているという認識である。

  エネルギー問題をどのように推進していくかは,日本にとって重要な課題ですが,そのことに取り組む精神の大原則として,「エネルギー改革三原則」を提案している。
 1. 常に科学的かつ合理的に判断する
 2. 感情に流されず,勇気を持って現象をきちんと正面から見つめる
 3. ウソをつかない
 至極当然のことを三原則としていますが,原子力に携わった科学者として原発の推進派と反対派の人々に原点に返って議論を積み重ねてほしいとの願望も入っているようにも思われる。

 先日,新聞で京都大と近畿大の研究用原子炉について,原子力規制委員会が新規規制基準を満たすとする審査書案を示すと報じていた。
 国内に京都大と近畿大にしかない研究用原子炉が平成26年に相次ぎ停止させられたため,年間約300人の学生が核燃料の取扱いや原子炉運転の経験を積む場として利用していた教育の場が奪われ,韓国の大学に学生を派遣して実習を行っているとのこと。
 原発に比して線香花火程度の研究用原子炉(出力1W~5,000kW)まで止める原子力規制委員会のこの措置は,「壓ものに懲りて,膾を吹く」ではなく,「吹き倒している」ように思われる。
 記事では,福島事故後,国内では原子力技術者を志す学生が大幅に減ってきていると報じている。
  しかし,今後は原発の再稼働を進める上からも,また,半世紀以上活用してきた老朽化原発の廃炉に取り組むにも,長期間にわたって多くの技術者・研究者を確保し、原子炉の安全研究や管理技術の向上を図ることが社会的に強く求められる。
 それらのためにも,内閣からの独立性の高い三条委員会である原子力規制委員会が,原子力の教育・研究の芽を摘むような独善的な対応を行うことには,早急に改革・改善の必要性があり,技術者として強く抗議したい。
 また,原発反対派の姿勢と推進派の対応に福島事故を経験したことによる教訓をベースに進展があったように思われないのは,残念である。



石山テクノ建設株式会社 顧問 坂本良高


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