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沖縄の那覇市の近くの中城村に、中村家という民家を訪ねたのはもう二十年も昔のことである。
焼け野原となった沖縄本島では貴重な民家である。 中村家はアプローチに石灰岩を精緻に積んだヒンプン(*注)があり、朱色の琉球瓦を漆喰で固めた屋根のある典型的な沖縄の民家である。 内部は床も壁も黒ずんでいる。 何の木を使っているのか見分けがつかなかったが、後で、ブャーギ(イヌマキ)とイーク(モッコク)が使われているということが分った。 木の性質からして床柱がモッコク、それ意外はイヌマキと推測される。 木材として沖縄ではこの他にはフクジイ(フクギ)がよく使われたらしい。 イヌマキは本土では庭園樹として馴染まれている木だが、木材としても優れた性質をもっている。 直幹材の少ない沖縄では本土の檜と杉を合わせた以上に重要な木材であったらしい。 そんな優れ木を犬呼ばわりするのはケシカランと思う。 同じマキと呼ばれて似て非なる木にコウヤマキという朝鮮の百済の王の棺桶にまで使われたという木がある。 この木は日本にしかない木でイヌマキと同じで耐水性に優れている。 現代ではイヌマキほどではないが庭園樹としても使われる。 どちらも優れた木で優劣つけがたい。 一方を犬呼ばわりする根拠が何だったのかナゾである。 沖縄の民家は朱色の瓦で特徴づける人が多いが、その瓦はせいぜい明治以降のことで、それまでは茅葺きだった。 沖縄の民家を文字通り支えてきたのは犬と呼ばれたマキの木だったのである。 そういえば屋根の上にも犬がいた、シーサー(狛犬)はいつから屋根の上に飾られるようになったのだろうか。 (株)京都建築事務所 代表取締役専務 小林一彦
(*) 道路から石垣の間の入口を入ると、正面にある石の壁のこと。この壁がヒンプンです。 初出 (株)京都建築事務所 機関誌「とれみ」Vol1
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