(10)河回のヤマナラシ



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  10数年前の5月初旬、韓国の慶州から中部の安東まで自動車で旅行した際に、街路樹にヤマナラシが多いのに驚いた。日本では ほとんど見たことがない。新緑で一番美しい季節なのに美しいヤマナラシにはお目にかかれなかった。むしろ剪定されて哀れな姿のヤマナラシを多く 見かけた。韓国の山はどの山も濃緑の松が占有していて、山裾を淡い緑の落葉樹が覆っている。その落葉樹の中でよく目立っていたのが羽状の樹形の ヤマナラシだった。その外側に芝で覆われたお椀を伏せたような土饅頭のお墓が点在していた。
  安東の近くに民族村「河回(ハウエ)」がある。洛東江という釜山まで流れている大河のほとりにある。安東は上流だが川幅は広い。そ の名は河が大きく蛇行してUの字型の土地を作ったことに由来している。河原は白い砂浜で、陸側に防風林的な松林があった、その河側に伸びやかにヤ マナラシが生えていた。植えられたものでなく自然に生えてきたのでないかと思う。5月初旬の新緑の季節、白い砂浜、濃緑の松の緑、と組み合わせが 良かったのか、ヤマナラシがこんなに美しい樹木なのかと驚いた。
  松とヤマナラシは意図した組み合わせではないと考えたのは、このような組み合わせをこれまでみたことがなかったこと、ヤマナラシは パイロット植物で荒地に進出しやすくわざわざヤマナラシを植えるような場所ではないという理由からである。
  しかしながら松とヤマナラシの組み合わせを日本で発見した。枚方市の中学校の校庭に植えられていた。河回のように松とヤマナラシは 並列に植えられていた。こちらは意図したものに違いない。組み合わせは成功している、河原でなくてもいい景色だった。

(株)京都建築事務所 監査役 小林一彦