(12)門掛けのイロハモミジ



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  この絵の門は南禅寺の近くの宿泊施設「洛翠」に秀吉の伏見城から移築されたと伝えられる「不明門(あかずのもん)」である。 門掛けの樹木はモミジである。このモミジは門が移築される前からこの地にあったのか、後から植えられたのか定かでないが、景色として見事に納まって見える。
  日本に古来からある常緑木信仰のなかで、他の常緑樹を差し置いて、ほかならぬ松が延命、長寿、繁栄等祝いのシンボルとしてずば抜けた地位にあった。 従って門掛けの樹木は松が定番であった。しかしながら地方によっては他の常緑樹が使われることも珍しくない。九州はイヌマキが多く、四国ではカイズカイブキを 見た記憶がある。それらの樹木は庭木としてその地方を代表している。日本の都であった京都は当然松が多く、社寺仏閣等歴史的な建物はみな松である。 御所の門も数多くあるがいずれも松である。
  京都の紅葉を代表する木にイロハモミジがある。このイロハモミジを門掛けにした事例をここ以外でも時々見かける。春先の繊細な新緑、真っ赤な紅葉は、 高雄や東福寺などモミジの名所が数多くある京都人の好みであり、秋の京都観光のシンボルでもある。モミジの魅力が常緑木信仰を忘れさせたのだろうか。
  モミジは松と違い枝が細く枝垂れやすいので、屋外のテーブルや車などいろいろな物に「掛ける」という日本の伝統的な美学の表現に最適な樹木ではないだろうか。
  紅葉狩は日本の専売特許ではなく、お隣の韓国でもその他の国でも、モミジあるところは程度の差はあってもそのような慣習がある。あるいは広まっているのだろうか。 美意識もグローバル化していく。しかし門掛けは見たことがない。

(株)京都建築事務所 監査役 小林一彦