(16)招霊の木



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  おがたまの木は「招霊の木」と書く。御神玉、小賀玉と表記されている場合もある。「天に向かってまっすぐに枝を伸ばすことから神霊を招く木、 すなわち神の依り代(よりしろ)とされてきた」という説がある。玉串など現在は神事に「榊」を用いているが古来は「おがたま」の木が用いられたらしい。
  おがたまの木は特別にまっすぐ枝を伸ばすから、神の依り代とされたとあるが、特にまっすぐではなく、ごく普通の枝振りの常緑樹である。 では何故に何時「おがたまの木」という特別な名前を獲得したのか、古来は神事に「おがたま」が使われていたらしいが、何時からどのような理由で榊にかわったのか、謎である。
  「おがたまの木」はモクレン科、おがたま属で、春に芳香のある白い花を咲かせる。花は小さく目立たない。関東以西に自生しているが、身近にはあまり見かけないし、 知られてもいない。モクレンや榊は広く知られているが、高千穂の神話の時代からあると伝えられる。
  あまり知られていないものの、縁起樹として神社に植えられている。神話の里、高千穂町の町木に指定されたり、一円玉のデザインにもなっている。また各地の天然記念物になったり、 京都府神社庁が「おがたまの木」絵画コンクールを毎年開催しているなど、知る人ぞ知る特別な存在である。
  京都市の白峰神宮に樹齢800年といわれる「おがたまの木」がある。この地は蹴鞠、和歌の宗家飛鳥井家の邸跡で明治天皇が明治元年に創建された神宮である。 この神宮のシンボルツリーとして、名前も大きさもふさわしいが、幹の大きさや樹形からして、樹齢800年はオーバーである。140年前の創建時に植えられたと推察すると、つじつまが合う。
  一般的には縁起樹として神社に植えられる以外、庭木などの造園材としても、木材としても、ほとんど使われることはない。
小林一彦建築設計事務所 小林一彦