(17)神木・春日大社の楠



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  神の依り代として、注連縄や鳥居、案内板等で表示された大木や古木は、全国各地に見ることが出来る。神様の位まで出世した、出世させられた樹種は何が最も多いのだろうか。 これによって人と樹木の歴史的な繋がりが解明されそうだが、そのような調査は聞いたことがない。国、県、市町村指定の天然記念物としての木がその手がかりになりそうだ。神が宿るような木は、 天然記念木でもあり、畏怖される存在感を有すると思われるからである。指定される樹木は名木、巨木、老樹、奇形木が多い。樹種は多様であるが、共通点は老樹である。老樹は巨木になり、名木になり、 奇形木になりやすい。屋久島では屋久杉と呼ばれるのは千年経った木で、それ以外は小杉と呼ばれている。千年経てば老樹であり、巨木、奇形になる確率は高い。千年生きれば神にもなれる。
  奈良の春日大社若宮社殿前の参道に大楠はある、参道側から見ると、少し大きな老木にしか見えない。参道の柵を越えて裏側に廻るとその異様な形態に驚く。この楠のことを三菱地所発行、 山本健治著「大楠のある住まい」では「そこにはるいるいと盛り上がった太い根が、まるで苔むした化石のようになって、大地にはびこっていたのである。」とたくみに表現している。 享保4年(1719年)の大雪で幹上部が折れたとある。長い年月、天変地変を生き抜いたからこその樹形である。人の想像力を超え、まさに神木である。
  春日大社の鎮守の森は椎、樫、楠、ナギなどの常緑樹と杉や檜の針葉樹に覆われた暗い森である。ナギが多いのは鹿が敬遠するからか、楠も幹に金網が張られていなかったので鹿は好まないのだろうか。 歴史ある春日大社というイメージからは意外に大木が少なく感じたのは、樹種の構成のせいか、環境の大きな変化によるものなのか、定かではない。
小林一彦建築設計事務所 小林一彦