(23)真如堂の花の木



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  「花の木」との出会いは、20年ほど前であった。京都市の閑静な住宅地松ヶ崎で住宅の改築の設計を担当した施主の庭に植えられていた。かなりの大木であったことを覚えている。 京都府植物園は大正時代に三井家から寄贈され、そこの北の出入り口近くに花の木がある。その後愛知県足助町の街路樹や、中央高速道恵那のサービスエリアでも見かけた。 仕事で関係している鹿児島の病院にも植えられていた。鹿児島では他にはないと思われるが立派に成長している。しかしその存在を知る人は少ない。
  花の木はカエデ科で別名「花楓」と呼ばれ愛知県の県花に指定されている。イチョウのように花粉を飛ばす雄と種をつける雌の木に分かれている。 どちらも毎年3月から4月上旬にかけて紅色の花を枝いっぱい咲かせる。紅葉も見事である。日本にしか分布しておらず、岐阜県東部から愛知県、長野県南部の山地の湿地に集中している。 生きた化石といわれ、祖先種が約2300万年前に東アジア、ヨーロッパ、北米大陸に広く分布していた。その後の気候変動によって分布が狭まり現在の地域に生き残っており、環境省の絶滅危惧類に指定されている。
  京都市左京区に天台宗の真如堂がある。広い境内で木造建造物も環境も素晴らしい。この境内の景観のポイントになるところに、花の木が植えられている。大正初期三井家から寄贈されたものから始まり、 現在は10本ほどあると案内板に書かれている。スケッチの「花の木」はそのルーツで、手水舎の傍に植えられている。竹垣で囲んで、京都市の案内板が設置されている。
小林一彦建築設計事務所 小林一彦