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迫りくる震度7 その14
【擁壁が壊れる原因と対策②変状と対策工事】


 擁壁は斜面に建つ住宅には必要不可欠なものですが、既存の擁壁が地震や豪雨により傾斜が生じたり倒壊する被害が増加しています。
 今回は、擁壁の変状と対策工事に関してご案内します。


1,擁壁の地震被害と不同沈下



1,1 地震による擁壁被害の4大原因

前稿の、迫りくる震度7 その13【擁壁が壊れる原因と対策①その擁壁は大丈夫ですか?でご案内しましたが、

 擁壁自体が原因の
・高さが2m未満
・既存不適格擁壁
・水抜き穴の不足

と、
・盛土造成 による軟弱地盤
の影響が挙げられます。

 2m未満の高さの擁壁と既存不適格擁壁が地震被害を受けやすいと言えますが、擁壁自体に問題が無くとも、擁壁を支える地盤の問題で擁壁に変状が生じる場合が有ります。
  河川・沼・田畑や山地などで盛土造成されている場合、擁壁の変位や背面土の沈下により建物の不具合が見られ、住宅の不同沈下の原因は、軟弱地盤の上に建てられた擁壁が沈下したことが大半であると言われています。

 軟弱地盤の例 ・海・河川・沼・田んぼの埋め立て地 ・水路や暗渠付近の土地 ・盛土で作った土地 ・粘土や砂を多く含む地層(レキ層、洪積層、ローム層、シルト層)

防災科学技術研究所 J-SHIS 地震ハザードステーションの、J-shis Mapで、



 画面上部の「微地形区分」を選択すれば、地域の地形区分を確認できます。 右下の詳細ボタンで、微地形区分の凡例が表示されます。

 微地形区分のうち、「谷底低地、後背湿地、旧河道・旧池沼、干拓地、埋立地」は軟弱地盤の可能性があり、地震豪雨に対して警戒が必要です。



2,擁壁の変状と対策



2,1 主な変状と対策

擁壁の変状と対策の概要は以下になります。





(出典)建築技術2007年4月号変状と対策工法の選定例を参考に再作成



3,対策工事例



3,1 擁壁沈下対策(薬液注入)

【原因】換算N値が5以下の軟弱な地層
【対策】充填工法(二重管ロッド工法)


【二重管ロッド工法】

①現況


道路側溝部より沈下し、石の目地が開いています。

②セメントミルク注入状況





 道路面より下の軟弱な箇所に注入を行いました。

③注入完了




④目地埋め戻し




3,2 擁壁移動対策(抑止工)

【原因】盛土と水抜き穴不良
【対策】抑止杭打設、水抜き孔の新設


【抑止杭打設】


(イメージ図)

①機材搬入


1本目が1.5m、それ以外は0.5mのケーシングを使用します。

②ケーシング挿入


 先行してガイド穴を掘削した後に、1本目を挿入し2本目以降をつなぎ合わせながら順次挿入します。



ケーシングを1.5m+0.5m×11本=7m挿入しました。

③セメントミルク充填


ケーシング挿入完了後に、ケーシング内にセメントミルクを充填しました。

④抑止杭打設完了


打設完了後、埋め戻して整地します。


3,3 水抜き穴新設

①水抜き孔新設位置のマーキング


鉄筋探査の上、コア抜き位置をマーキングします。


②コア抜き


ダイアモンドコアボーリング機を使用し、Φ75mmの孔をあけます。

③コア抜き完了


コア抜き完了後、孔内を清掃し防錆剤を塗布します。


3,4 沿え打ち工

既存間知ブロック擁壁の外部側に、支持杭新設の上、練積み間知ブロック擁壁を新設しました。




①現況



②支持杭設置、鉄筋組立



③コンクリート打設、新設間知ブロック組積完了



3,5 ひび割れ補修

【エポキシ樹脂低低圧注入】

 構造クラックではない軽微なひび割れは、エポキシ樹脂低圧注入によりコンクリートの機能を回復しました。

 ひび割れ発生による機能の低下を防ぎ、コンクリート構造物を「ひび割れが発生しなかった場合とほぼ同じ状態」にすることが「ひび割れ補修」です。
 補修を必要とするひび割れ幅は、耐久性、防水性から見た場合0.3㎜以上で、鉄筋の防錆を考慮した場合は0.2㎜程度です。水密性から見た場合は0.05㎜~0.15㎜と言われています。


ひび割れ幅とエポキシ樹脂の注入状況試験片断面
0.02mm幅まで注入しています。

 鉄筋に対し「有害幅」とされる0.2㎜程度以上のひび割れについてはエポキシ樹脂を注入し、錆の発生・進行の防止措置を講じる必要があります。

シリンダー(注入器)にエポキシ樹脂を充填した状況


①現況


②エポキシ樹脂注入状況




【鋼製アンカー補強】

補強が必要な構造クラック※は、『鋼製アンカー補強』で補強しました。

構造クラック
 建築物の壁や基礎などに生じる建物の安全性に影響を及ぼす危険性があるクラックです。
クラックの幅が0.3mm以上で深さが5mm以上の場合は、構造クラックの可能性が高く、幅が0.3mmよりも細く深さが浅い場合は「ヘアークラック」に分類されます。

補強用アンカー筋



①現況

コンクリート擁壁に幅の広い構造クラックが発生しています。

②溝斫り

アンカー筋設置用の溝を斫り出します。

③エポキシ樹脂注入

クラック内部にグリスガンで高粘度エポキシ樹脂を注入します。

④アンカー筋取付状況



アンカー筋を溝に設置します。

⑤埋め戻し



エポキシ樹脂モルタルで埋め戻します。

硬化後、表面の凹凸をサンディングケレンし、樹脂モルタルや塗装で仕上げます。


3,6 石積み擁壁補強(モルダム工法)

 空石積み擁壁の補修・補強工法「モルダム工法」は、既存の石積み擁壁を取り壊すことなく、石積み石垣の内部に、優れた接着性を有する専用充填剤を注入することで補修・補強ができる工法です。

①現状



②モルダム工法施工後



ご参考ページ

石積接着補強工法「モルダム工法」が、石積み擁壁の崩壊を防ぎます

迫りくる震度7 その13 【擁壁が壊れる原因と対策①その擁壁は大丈夫ですか?】







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