国難級の地震・津波被害

2026年6月30日に公表された
令和8年版防災白書のテーマは、「
国難級の地震・津波」に対する備えです。
冒頭にその趣旨が述べられています。
以下引用・・・
東日本大震災から15年、熊本地震から10年の節目となる本年、我が国は、地震・津波と向き合い 続けてきた歩みと教訓を改めて確認し、
次の災害への備えを一層確かなものにしていく必要がある。
・・・千島海溝・日本海溝で想定される巨大地震、甚大な被害が予測される首都直下地震、広範
囲に影響が及ぶ南海トラフ地震など、将来発生し得る大規模災害への備えは依然として喫緊の課題で
ある。
・・・企業には事業継続や地域との連携の強化、国民一人一人には住宅の耐震化や家具の固定、家庭備蓄、避難行動の確認など、日常に根差した具体的な備えの実践を期待したい。
・・・本特集が、行政・企業・地域・国民がそれぞれの役割を果たし、災害を「自分ごと」として捉え、主体的に備える行動へとつながる契機となることを期待する。
・・・引用終わり
現代社会における問題点は、大規模な地震で、
社会インフラが損傷し、通信や移動が妨げられ、遠距離通勤による
帰宅困難者が発生し、家屋の密集が
大規模火災を招き、多くの人々が
避難生活を強いられ、
日常生活が一気に破壊されることにあります。
内閣府の中央防災会議では、甚大な被害が想定される以下の4つの大規模地震を対象として防災対策および被害想定を策定しています。

【出典】日本の普通国債残高の推移(出典:
内閣府防災情報のページ)
これらの巨大地震がいつ来るのかではなく、
必ず来ることを前提とした上で、防災対策を進めることがとても重要です。
必ず来る原因は、日本列島は4つのプレートの境界にあり、それぞれのプレートは太古の昔から動き続けて、プレートの運動が地震や火山噴火の原因になることです。
【出典】気象庁ホームページ「日本付近のプレート模式図」
こうしたプレート運動による地殻変動は、1997年以降で最大2メートル程度まで蓄積しています。

【出典】国土地理院ウェブサイト「地殻変動情報表示サイト」
プレート内地震(海溝型地震)は、広範囲に地震被害が発生します。

【出典】気象庁「
南海トラフ地震-その時の備え-」
震度6弱以上または 津波高3m以上となる市町村は、31 都府県の764 市町村に及び、その面積は全国の約3割、人口は 全国の約5割を占めるなど、
影響は超広域にわたると想定されています。
想定される被害が、内閣府防災情報のページの、「南海トラフ地震防災対策推進基本計画 」で、以下のように述べられています。
地震動(強い揺れ)及び火災に伴う被害への対応
南海トラフ巨大地震では、地震の揺れとそれに伴う火災による建築物等の被害が、これまでの記録に残る地震災害とは
次元の異なる甚大な規模であり、救助・救急活動、避難者への対応、経済全体への影響等、対応を誤れば、社会の破綻を招きかねないため、人的・物的両面にわたって、被害の絶対量を減らすという観点から、事前防災の取組が
極めて重要である。
又、「南海トラフ巨大地震 最大クラス地震における被害想定について」の地震被害想定が以下です。
【発災直後の様相】
■建物・人的被害
・ 地震の揺れにより
約61万棟~約127.9万棟が全壊
約102.8万棟~約197.4万棟が半壊
・ 津波により、
約16.1万棟~約20.8万棟が全壊
・ 延焼火災を含む大規模な火災により、
約6.3万棟~約76.8万棟が焼失する。
・ 液状化により、
約9.4万棟~11万棟の建物が全壊。
約48.1万棟~53万棟が半壊。
これらの
次元の異なる甚大な規模の被害を他の地震被害と比較したグラフが以下になります。
熊本地震・阪神淡路大震災・上町断層帯(想定)の被害と比較して、如何に南海トラフ地震の被害想定が甚大なものかが分かります。
【図】大地震で発生する全壊・半壊・一部損壊
出典:消防庁「熊本地震の被害と対応」「阪神・淡路大震災の被害確定について」・近畿地方環境事務所「南海トラフ巨大地震・上町断層帯地震を例としたケーススタディーの実施
」・中央防災会議「最大クラス地震における被害想定について」より被害棟数を引用
地震や津波+経済低迷20年(土木学会推計)
2018年6月8日朝日新聞1面より引用 ・・・
「南海トラフ地震」後の経済被害額は最悪の場合、20年間で1,240兆円とする推計を土木学会が7日公表した。直接の被害と合わせると1,410兆円になる。建物の耐震化や道路整備などの対策によって被害額は4割程度減らせるとして、今後15年程度で完成させるよう提言している。・・・
記事の最後に「
日本が最貧国の一つになりかねない」とのコメントが有りましたが、1965年11月19日に佐藤栄作内閣が戦後初の赤字国債発行を閣議決定して以降、61年間に延々積み上がった国の借金が、2026年度末で1,145兆円に上ると見込まれています。

【出典】日本の普通国債残高の推移(出典:
財務省ウェブサイト)
「南海トラフ地震」後に、更に20年間で1,410兆円もの経済被害を負担し得るでしょうか?
内陸型地震(活断層による内陸部の直下型大地震)
南海トラフ沿いのプレート境界では、海側のプレート(フィリピン海プレート)が陸側のプレート(ユーラシアプレート)の下に1年あたり数cmの速度で沈み込んでいます。

【出典】
国土地理院ウェブサイト「
活断層とは何か?」より引用
その際、プレート内で起こる地震だけでなく、陸側のプレートが地下に引きずり込まれてひずみが蓄積され、陸側の破壊されやすくなっている断層で地震が発生します。
「東海地震」「東南海地震」「南海地震」は100~200年ほどの周期で繰り返し、南海トラフ地震が発生する前に内陸部の地震が活性化する期間が繰り返されています。
現在は次の南海トラフ地震の活性期真っただ中と言えますので、内陸部で活断層による直下型の大地震が今後も発生する可能性が有ります。
。
日本には約2,000カ所(陸域で約2,000)の活断層が存在し、特に関西(近畿)地方は「
地震の巣」と呼ばれるほどに活断層が密集し、過去より大地震が繰り返し各地で発生しています。
【出典】産総研「地質図Navi」に青色囲いを追記
最大震度7を記録した1995年兵庫県南部地震、2016年熊本地震、2024年能登半島地震は、南海トラフのプレートの沈み込みで陸地側プレートにひずみが蓄積して、地震を発生させていると考えられています。
内陸部の活断層による地震が南海トラフ地震を招くのではなく、南海トラフの沈み込みで内陸部にひずみが溜まり、活断層による地震が活発化することになります。

出典:気象庁「震度データーベース」
2016年熊本地震以降で現在までの地震活動
活断層の活動周期(間隔)は、数千年(滑動度A級)から数万年(滑動度B級)と非常に長く、日本の歴史で2000年前は、弥生時代まで遡る非常に長い活動周期です。
活断層の活動周期の内のわずか30年間の地震発生確率は、海溝型地震の活動周期とくらべて低い値にしかなりません。
例えば、今後30年以内に発生する確率で、南海トラフ地震は
約70~80%と評価されていますが、1995年兵庫県南部地震の発生確率は
0.02~8%でした。
2016年熊本地震の発生確率が「
ほぼ0%から0.9%」と評価され、我が国の主な活断層における相対的評価として「
やや高い」と分類されていました。
2000ヶ所の活断層の活動周期を2000年と仮定すると、2000ヶ所/2000年=1ヶ所/1年となり、毎年どこかで活断層による直下型大地震が発生してもおかしくないのが、日本の国土の実情です。
安全の要の「耐震化」
津浪からの迅速な避難や建物耐震化により、最悪ケースの死者は6万1千人に減らせると内閣府は減災対策を進めるよう呼び掛けています。

【出典】内閣府令和8年度防災白書
阪神淡路大震災での住宅全壊104、906棟、東日本大震災での約129,000棟の被害から見て、「南海トラフ地震」の地震の全壊・焼失2,350,000棟の被害予測がいかに大きいかが分かります。
建物を耐震化することで、全壊や倒壊を防ぎ、人の命を守ることに繋がります。(耐震化とは、旧耐震基準の建物を耐震診断した結果、耐震性が不足している場合に耐震改修工事を行うことで、現行法の耐震基準の建物と同等の耐震性を確保することが出来ます)
建物倒壊約127.9万棟は、耐震化率100%で約35.9万棟に減ると想定されています。

【出典】内閣府令和8年度防災白書
基本計画の特徴 で、以下の様に国民一人一人の意識の重要性を述べられています。
千島海溝地震、日本海溝地震や南海トラフ地震においては、「広域にわたり強い揺れと巨大 な津波が発生し、・・・被災の範囲が広域にわたり、これまで経験したことのない甚大な被害が想定されている。
・・・これらの被害の特徴を踏まえ、基本計画においては、従来の地震・津波対策の延長では対応が困難 となる場合も考慮し、「行政が守る者、国民が守られる者」という考え方から、
「行政・地域・事業 者・国民が共に災害に立ち向かう」という意識を国民一人一人が持つことの重要性が示されるととも に、国、地方公共団体、事業者、NPO、ボランティア等の多様な主体が連携し総力を結集して、
ハード・ソフト両面から、被害を未然に防ぐための
予防対策、円滑かつ迅速な
応急対策の備え及び
迅 速な復興・より良い復興への備えに取り組む、といった
基本的方針が示されている。
まずは身近な防災対策から
南海トラフ地震の発生がいつかを特定することは困難ですが、要点として
・周期的に必ず起こる大地震であり、発生時期が近付いている。
・東日本大震災よりも、遥かに甚大な被害が広範囲に発生する。
そのために、まずは身近な防災対策の見直しから始めることが大切です。
【続編】
迫りくる震度7 その6 【南海トラフ地震前に関西で直下型大地震の可能性は?】
2026年7月22日改定
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